知的財産情報

ホーム > 知的財産情報 > 判例紹介 > 検査用プローブの製造方法事件

判例情報


平成26年(行ケ)第10213号
検査用プローブの製造方法事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 「線材に与えられるエネルギ量」は線材の反射率(あるいは吸収率)や熱伝導率によって変化するから,「レーザ光により線材に与えられるエネルギ量」を,「照射されるレーザ光のエネルギ量」とする本件補正1は発明特定事項を変更する補正であるとされた。

 事件番号等:平成26年(行ケ)第10213号号(知財高裁 H27.09.24 判決言渡)
 事件の種類(判決):拒絶審決取消請求(請求棄却)
 原告/被告:株式会社サンケイエンジニアリング,X/特許庁長官
 キーワード:特許請求の範囲の減縮,補正却下,発明特定事項の変更,溶接,進歩性
 関連条文:特許法17条の2第5項2号,同法29条2項

○事案の概要

 本件発明は,第1の線材及び第2の線材を接合して構成される検査用プローブの製造方法に係る発明である。審決は,本件発明に対してなされた補正(本件補正1)を却下し,本件発明と引用発明の相違点について,相違点1(レーザ溶接される際の第1の線材,第2の線材及びレーザの位置)及び相違点2(本件発明では,「前記レーザ光により前記第1の線材と前記第2の線材のうち材料の融点が高い側に与えられるエネルギ量を,融点が低い側に与えられるエネルギ量よりも大きくした」構成を具備する点)を認定し,本件発明は引用発明に基いて当業者が容易に想到できたものであると判断した。
 なお,本件補正1は,上記②において,「前記第1の線材と前記第2の線材のうち材料の融点が高い側に照射される前記レーザ光のエネルギ量を,融点が低い側に照射される前記レーザ光のエネルギ量よりも大きくした」の構成にする補正である。

○知財高裁の判断

(1) 本件補正却下の決定に誤りはない
 本願発明の「線材に与えられるエネルギ量」とは,当該線材にレーザ光が照射されることによって当該線材に直接的に与えられるエネルギ量と,他方の線材にレーザ光が照射されることによって他方の線材に直接的に与えられるエネルギ量のうち,当該線材への熱伝導によって当該線材に間接的に与えられるエネルギ量とを合わせたものをいうことになる。
 また,線材の表面での反射は無視できるほど小さいとはいえないから,線材に直接的に与えられるエネルギ量とは,線材に照射されるレーザ光のうち,反射することなく線材に吸収されるレーザ光のエネルギ量をいう。
 すなわち,本願発明の「線材に与えられるエネルギ量」は,本件補正後発明の「線材に照射されるレーザ光のエネルギ量」のみならず,線材の反射率(あるいは吸収率)や熱伝導率によっても変化する値である。
 しかも,本件補正後発明及び本願発明は,線材の材質を特定していないことから,検査用プローブに適用可能なあらゆる材質の線材を含むもので,接合される線材の組合せによっては,線材間の反射率(あるいは吸収率)の差や熱伝導率の差によって,一方の線材に照射されるレーザ光のエネルギ量が他方の線材に照射されるレーザ光のエネルギ量よりも大きいとしても,一方の線材に与えられるエネルギ量が他方の線材に与えられるエネルギ量よりも小さくなることは当然に起こり得る。
 よって,補正事項1は,本願発明の発明特定事項を変更する補正であり,特許法17条の2第5項2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とする補正には該当しない。

(2) 相違点2の容易想到性の判断に誤りはない
 引用例2記載技術は,異種金属板の突き合わせレーザ溶接に関するものであって,融点の異なる金属材料を突き合わせレーザ溶接するに際し,レーザビームの照射位置を融点の高い材料側にシフトすることにより,融点の高い材料への投入エネルギを大きく,融点の低い材料への投入エネルギを小さくして,突合せ部で両方の材料を適度に溶融させるという金属板に限定されない一般的な異種金属間のレーザ溶接の要素技術を開示するものと認められる。したがって,引用発明を前提として,異種金属間のレーザ溶接に関する知見を得ようとする当業者においては,引用例2に接し,引用発明に引用例2記載技術を適用することを動機付けられるものと認められる。
 引用発明における接合部の径の増大を抑えるという課題は,プローブと銅線とを半田付けで接続することにより接続部の径が増大するという従来技術に対して設定された課題であり,そのために引用発明は,異種金属間のレーザ溶接を行うものである。一方,引用例2記載技術の課題は,異種金属間のレーザ溶接の品質向上を図るものであるから,両者の課題は共通し得るものであり,引用発明に引用例2記載技術を適用する動機付けが認められる。
 引用例2記載技術は,溶接対象となる異種金属の融点の差異に着目した技術であって,当該金属のサイズや材質に関わらない技術である。仮に原告が主張するとおり,引用発明と引用例2記載技術との間にスケール及び融点の差の大きな相違が認められるとしても,溶接対象金属のサイズ及び材質に応じてシフト量を設定することは,試行錯誤的に適宜設定し得る事項であると考えられる。

© 2017 SAKURA PATENT OFFICE. All Rights Reserved. 特許業務法人 サクラ国際特許事務所
〒101-0047 東京都千代田区内神田1丁目18-14 ヨシザワビル6階
Tel. 03-5577-3066(代)/Fax. 03-5577-3067
国内および外国特許・意匠・商標の出願代理、鑑定、相談、訴訟|特許業務法人 サクラ国際特許事務所