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平成26年(ワ)第7548号
汚染防止剤組成物


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 原告の製品(ダスクリーン上質1号,そのMSDS(乙11))及び乙2発明のいずれも,抄紙工程のドライパートにおけるピッチ汚染防止剤とは認められず,本件発明1は,これらのいずれとも同一ではないとされた。

 事件番号等:平成26年(ワ)第7548号(知財高裁 H27.08.25 判決言渡)
 事件の種類(判決):特許権侵害差止等請求事件(請求認容)
 原告/被告:株式会社メンテック/株式会社南日本モラブ
 キーワード:新規性,「ダスクリーン」の用途,作用の相違
 関連条文:特許法29条1項各号

○事案の概要

 本件発明は,「抄紙工程のドライパートにおけるピッチ汚染を防止する汚染防止剤組成物であって,非シリコーン系オイルと,該非シリコーン系オイルを乳化させる乳化剤と,を有し,前記乳化剤が,脂肪酸とアミン化合物との中和物である汚染防止剤組成物。」である。
 本件は,原告が,被告に対し,被告による被告製品(抄紙用汚染防止薬液)の販売等が原告の特許権の侵害に当たる旨主張して,被告製品の販売等の差止め及び損害賠償金の支払いを求めた事案である。本件訴訟において,被告は,本件特許に新規性欠如の無効理由があり,権利行使が制限されるとの主張をした。

○知財高裁の判断

■ダスクリーン上質1号及び乙11発明に基く新規性欠如について
 本件発明と乙11発明及びダスクリーン上質1号との間には,少なくとも,本件発明が抄紙工程のドライパートにおけるピッチ汚染を防止する汚染防止剤組成物(構成要件A,D)であるのに対し,本件MSDSにはその記載がないという相違点があると認められる。
 この相違点につき,被告は,「ダスクリーン」がドライパート汚れ防止に使用できるとの記載のある平成26年時点の原告のウェブサイト(乙6)の存在を指摘するが,・・・,原告は,上記優先日以前から,紙粉・マシン汚れ防止薬品(抄紙機,加工機,コルゲータ用)の製造販売を業としており,その製品にはダスクリーン新聞,ダスクリーン白板,ダスクリーンライナー,ダスクリーンクラフト,ダスクリーン上質2号,ダスクリーンRP108A等の名称のものがあることが認められ,これら各製品の用途は異なることがうかがわれる。そうすると,「ダスクリーン」としか特定されていない上記ウェブサイト記載の薬品が乙11発明ないしダスクリーン上質1号と同じものか否かは不明であり,ダスクリーン上質1号が抄紙工程のドライパートにおけるピッチ汚染防止に使用されるものであると認めることはできない。

■乙2文献に基く新規性又は進歩性の欠如について
 被告は,乙2文献に記載されたクレープ用離型剤が本件発明に係る抄紙工程のドライパートにおけるピッチ汚染を防止する汚染防止剤組成物(構成要件A,D)と実質的に同一であることを前提に,本件発明が新規性又は進歩性を欠くと主張する。
 そこで判断するに,離型剤及び汚染防止剤がいずれも抄紙工程に用いられる薬剤であるとしても,両者が作用を異にするものであることは被告も認めるところであり,紙をドライヤー表面から離れやすくする離型作用のために汚染防止剤を用いたり,ドライパートにおけるピッチの付着を防止する汚染防止作用のために離型剤を用いたりすることを示す証拠はない。
 また,被告が指摘する原告代表者執筆の論文(乙9)には,離型作用と汚染防止作用の双方を奏するダスティング防止剤について記載されているが,これは同論文の記載に沿って選定されたダスティング防止剤を所定の方法で使用する場合に関するものにとどまり,これをもって乙2文献記載の離型剤がピッチ汚染を防止する汚染防止剤に当たると認めることはできない。
 したがって,上記離型剤と汚染防止剤組成物が実質的に同一であることを前提とする被告の新規性又は進歩性欠如の主張は,いずれも失当というほかない。

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