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平成26年 (行ケ)第10157号
表面実装型半導体装置事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 樹脂成形体について「トランスファ成形」を採用した結果,バリ抑制という課題が生じたことについて本件明細書に記載はなく,甲3-1発明には,熱硬化性樹脂に酸化チタンの白色粉末を配合して第2の樹脂成型体を形成すること,及び訂正発明1における半導体発光素子の配置のそれぞれを採用する動機付けがあるとされた。

 事件番号等:平成26年(行ケ)第10157号(知財高裁 H27.09.16 判決言渡)
 事件の種類(判決):無効審決取消請求事件(請求棄却)
 原告/被告:日亜化学工業株式会社/Y
 キーワード:設計事項,動機付け,発明の技術的意義
 関連条文:特許法29条2項

○事案の概要

 訂正発明1は,発光素子と,発光素子を載置するための第1のリードと発光素子と電気的に接続される第2のリードとを一体成形してなる第1の樹脂成形体と,発光素子を被覆する第2の樹脂成形体と,を有する表面実装型発光装置に関する発明である。本件訴訟は訂正発明1の進歩性欠如を理由とした無効審決の取り消しを求めて提起されたものである。これに対し,知財高裁は以下の理由により原告の請求を棄却した。

○知財高裁の判断

 原告は,訂正発明1は,第1の樹脂成形体に使用する材料として,第1の樹脂成形体の耐光性・密着性の見地から,特に熱硬化性樹脂を選択し(相違点6),その選択の結果,従前の成形法であった射出成形では著しく成形が困難であったため,「トランスファ成形」(「トランスファ・モールド」による成形)を採用し(相違点7),さらに,熱硬化性樹脂の採用に伴って,従来技術の構成における半導体発光装置においては想定されていなかったバリ抑制という課題が新たに生じたため,従前の構成とは異なる,バリの発生を抑制できる形状として発光素子載置領域のリードの裏面露出構成を見出して採用したものであり(相違点8),相違点6ないし8は相互に関連して,従来技術における半導体発光装置にはなかった課題を提示すると同時に,その課題解決手段を提供する点に訂正発明1の技術的意義がある旨主張する。
 そこで検討するに,本件明細書には,・・・第1の樹脂成形体に使用する材料として熱硬化性樹脂を採用した結果,従前の成形法であった射出成形では著しく成形が困難であったため,「トランスファ成形」を採用したことについての記載はない。・・・また,本件明細書には,熱硬化性樹脂の採用に伴って,従来技術の構成における半導体発光装置においては想定されていなかったバリ抑制という課題が新たに生じたため,従前の構成とは異なる,バリの発生を抑制できる形状として発光素子載置領域のリードの裏面露出構成を見出して採用したことについての記載もない。
 以上によれば,原告の上記主張は,本件明細書の記載に基かない主張であって,採用することができない。

(相違点6,相違点7,相違点8の容易想到性)
 甲3に接した当業者には,甲3-1発明の半導体発光装置において,反射部材である「第2の樹脂部材」と封止部材である「第1の樹脂部材」との結合強度を高めるとともに,「第2の樹脂部材」の反射率を向上させるために,本件出願当時,反射部材に使用されることが周知であり,かつ,耐熱性及び接着性・密着性に優れている熱硬化性樹脂を「第2の樹脂部材」として採用し,これにTiO(酸化チタン)の白色粉末を配合することの動機付けがあるものと認められるから,当業者は,甲3-1発明において,相違点6に係る訂正発明1の構成とすることを容易に想到することができたものと認められる。
 甲3には,「第2の樹脂部材」の成形方法を特に限定する記載はないから,甲3-1発明において,「第2の樹脂部材」をどのような成形方法により形成するかは,当業者が設計上の必要に応じて適宜選択し得る設計的事項であるというべきである。
 甲3-1発明の半導体発光装置において,高輝度の発光を得るために高出力・高発熱量の半導体発光素子を用いた場合,樹脂は金属よりも熱伝導性に劣るため,・・・リードフレームからの放熱効率を向上させるために,リードフレームの半導体発光素子が設けられている領域の主面側と反対の裏面側を露出させるように,半導体発光素子を配置する構成とする動機付けがあるものと認められる。

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