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平成26年(行ケ)第10205号
温度センサ事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 引用発明2の「センサ材料等」は,センシング部位に限られず,温度センサの他の部位の構成材料をも含むと解されるから,これを引用発明1に適用して,本願補正前発明を容易に想到し得るとされた。

 事件番号等:平成26年(行ケ)第10205号(知財高裁 H27.04.28 判決言渡)
 事件の種類(判決):拒絶審決取消請求事件(請求棄却)
 原告/被告:日本特殊陶業株式会社/特許庁長官
 キーワード:進歩性,引用発明の認定,白金,ストロンチウム
 関連条文:特許法29条2項

○事案の概要

 本件発明は,感温部と電極部を有する感温素子を備えた温度センサに係る発明である。本件訴訟は,拒絶査定不服審判の請求と同時にされた補正を,独立特許要件違反を理由に却下するとともに,審判の請求が成り立たないとした審決の取り消しを求めて原告が提起したものである。
 審決は,本願補正後の発明(本願補正発明)と甲1に記載された引用発明1の相違点を,「電極線に用いられる白金材料について,本願補正発明においては,電極線に用いられる白金材料が「白金に,又は,白金と少なくとも1種以上の白金族元素(白金を除く)とからなる白金合金(以下,単に「白金合金」ともいう。)に,ストロンチウムが含有された材料」からなるのに対し,引用発明1においては,「白金製」であることが示されているにすぎない点」を認定し,本願補正発明は,当業者が引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に想到できたものであると判断した。また,本願補正前の発明(本願補正前発明)も同様に容易想到であると判断した。

○知財高裁の判断

 ①一般に,「温度センサ」という語は,センシング部位のみならず,電極線や信号線等も含めた装置全体を意味するものとして使用されていること,②「センサ用金属材料」という技術用語は,センサとしての機能を担う機能性材料のみならず,補助的な役割を果たす構成補助材料等を広く含むことが認められる。
 さらに,前記(ア)のとおり,引用例2(甲2)において,「センサ材料等」という語は,「高温で使用される」もので,「高温での特性に優れた白金材料」が「構成材料として有用」とされるものの1つとして例示されているにすぎず,温度センサのどの部位の材料であるかについては,言及されていないところであるが,センシング部位が「高温で使用される場合」,通常は,これに接続されている電極線等も同様に「高温で使用される」状態にあるものと考えられる。
 以上に鑑みると,引用発明2の「センサ材料等」はセンシング部位のみの構成材料に限られず,電極線,信号線など温度センサを構成する他の部位の構成材料をも含むものと解すべきである。

 引用例2(甲2)に接した当業者は,白金にストロンチウムを加えた線材は,高温下において強度を増すことを認識するものと認められる。
 そして,前記3⑵イ(エ)のとおり,引用発明2の「センサ材料等」は,センシング部位のみの構成材料に限られず,電極線,信号線など温度センサを構成する他の部位の構成材料をも含むものと解すべきであることにも鑑みると,当業者は,引用発明1につき,白金製の電極線102の強度を高めるための手段の1つとして,白金にストロンチウムを含有させたものを電極線102の材料として使用することを容易に想到するものと推認できる。
 さらに,・・・によれば,・・・当業者は,ストロンチウムの融点は,白金の融点よりも相当に低いことから,白金にストロンチウムを含有させたものを電極線の材料に使用しても,信号線との溶接時にストロンチウムが溶解しないことによって溶接強度の低下を招くという事態は生じないことを,技術常識として認識するものと考えられる。
 以上によれば,当業者は,引用発明1につき,①電極線として用いる白金材の結晶粒の粗大化が一因となって,高周波域における強振動により,電極線に断線が生じること,②白金又は白金合金を主成分とし,金属酸化物を添加した白金分散強化材を電極線の材料とすれば,電極線自体の強度が高められるので,断線の抑制効果は期待できるものの,電極線と信号線とをレーザ溶接する際,白金及び白金合金よりも融点が高い前記添加に係る金属酸化物が溶解せず,そのために溶接強度が低下するという問題が発生することを,公知の技術課題として認識し,その課題を解決するための手段として,白金にストロンチウムを含有させたものを電極線102の材料として使用すること,すなわち,引用発明1の「温度センサ1」の「白金製の電極線102」の白金材料として,引用発明2に示された「白金にストロンチウムを含有させ」た白金材料を用い,相違点に係る本願補正発明の構成とすることを,容易に想到し得たというべきである。

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