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判例情報


平成26年(行ケ)第10111号
表面に放射性汚染物が付着した野菜の洗浄方法事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 人体への安全性,洗浄力の点から,殺菌水に代えて本願の出願当時公知であった還元水を選択することは容易想到であり,また,本願発明のマイクロバブル水と引用発明の炭酸水の差異について,当該炭酸水の生成方法等を考慮すれば,両者の差異に格別な技術的意義はないとして,本願発明は容易想到であるとされた。

 事件番号等:平成26年(行ケ)第10111号(知財高裁 H27.03.25 判決言渡)
 事件の種類(判決):拒絶審決取消請求(請求棄却)
 原告/被告:株式会社津田/特許庁長官
 キーワード:進歩性,容易想到,周知技術
 関連条文:特許法29条2項

○事案の概要

 本願発明は、「表面に放射性汚染物が付着した野菜の洗浄処理方法であって,前記野菜を,水素ガスを水中で微細気泡化して還元処理を行った酸化還元電位が-400mV~-600mVである還元水を用いて洗浄し,前記放射性汚染物を除去する第1洗浄段階と,前記野菜を,野菜の活性と鮮度を保つ空気を水中で微細気泡化させたマイクロバブル水を用いて洗浄する第2洗浄段階と,洗浄汚染水中の放射性物質の除去を行う洗浄汚染水処理段階と,を有し,前記第1洗浄段階と前記第2洗浄段階とを連続的に行うことを特徴とする表面に放射性汚染物が付着した野菜の洗浄方法。」である。
 審決は,引用発明と本願発明の相違点(1)について,「「第1の洗浄液」及び「第2の洗浄液」が,本願発明ではそれぞれ「水素ガスを水中で微細気泡化して還元処理を行った酸化還元電位が-400mV~-600mVである還元水」及び「野菜の活性と鮮度を保つ空気を水中で微細気泡化させたマイクロバブル水」であるのに対して,引用発明ではそれぞれ「殺菌水」及び「炭酸水」である点。」を認定し,これを容易想到であると判断した。

○知財高裁の判断

(還元水について)
 本願の出願当時,還元水が洗浄・殺菌力を有していることが公知であったことについては当事者間に争いはなく,・・・,還元水として,水素ガスを水中で微細気泡化して還元処理を行った酸化還元電位が-400mV~-600mVである還元水が存在していたこと,還元電位が低い方が一般的に洗浄力が高いことは周知技術であったことが認められる。また,・・・,本願の出願当時,・・・還元水は,・・人体に対する安全性が高いものと認識されていたものと認められる
 そうすると,より人体に対する安全性が高い方法とするため,引用発明において還元水の採用を試みることの動機付けがあるというべきであり,洗浄力の観点から,より酸化還元電位の低い当該還元水を採用することは,当業者が容易に想到することができたものである。

(マイクロバブル水について)
 引用例1によれば,引用発明における炭酸水は,加圧給水された水に炭酸ガスを吸収させることによって生成させているのに対し(【0022】),本願明細書によれば,本願発明におけるマイクロバブル水は,加圧噴射された水に空気をエジェクターにより吸収させ空気のマイクロバブルとして生成させているものである(【0013】)。そうすると,本願発明のマイクロバブル水と引用発明の炭酸水とは,いずれも加圧給水された水に気体を吸収させることにより生成したものであるから,吸収させる気体が本願発明は空気であるのに対し,引用発明は炭酸ガスであるという相違はあるものの,吸収させた気体の大きさ等に相違があるとはいえず(本願の明細書によれば,キャビテーション装置によりマイクロバブルをさらに微細化することも記載されているものの,この微細化する前のものも「マイクロバブル」と記載されていることから,同判断を左右しない。),これらの吸収させた気体の差異に格別の技術的意義があるとは認められない。そして,・・・本願の出願当時,野菜の洗浄液としてマイクロバブル水を用いることは周知の技術であることも併せて考慮すれば,引用発明の炭酸水に代えてマイクロバブル水を用いることは当業者が適宜なし得る設計事項というべきものである。

(発明の効果について)
 なお,原告は,本願発明については,「本願発明の還元水の水素ガスは気化するので,残留する成分を何も加えない」という効果や「野菜の表面に付着した放射性汚染物を除去できる」という格別の効果がある旨主張する。しかし,これらの効果は洗浄水として還元水を用いたことによる効果か,本願発明の構成に基づく効果であるにすぎず,本願発明の構成が前記のとおり容易想到である以上,これを格別の効果であるということはできない。

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