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平成26年(行ケ)第10061号
熱間圧延用複合ロールの製造方法事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 Ti酸化物によるVC炭化物の微細化は,接種による合金組織の改良という広い意味では,多くの合金組織の改良において共通するが,接種の効果を発揮させ得る接種剤の添加時期や方法は,接種剤の種類や量などによって異なるなどとして,本件発明1の進歩性を認めた審決が維持された。

 事件番号等:平成26年(行ケ)第10061号(知財高裁 H26.11.05 判決言渡)
 事件の種類(判決):特許維持審決取消請求(請求棄却)
 原告/被告:日鉄住金ロールズ株式会社/株式会社フジコー,株式会社中山製鋼所
 キーワード:進歩性,連続鋳掛け法,合金組織の改良,Ti酸化物
 関連条文:特許法29条2項

○事案の概要

 本件発明1は,熱間圧延用複合ロールの製造方法に関する発明であり,鋼系材料からなる芯材の周囲に,C,Si,Mn,V,Cr,Mo,WおよびTiをそれぞれ所定の質量割合で含有し,残部がFeおよび不可避的不純物からなる外層材を形成し,連続鋳掛け法を用いて複合ロールを製造するにおいて,溶解炉より外層材を出湯する際に取鍋もしくは注湯炉に出湯1kg当たりTiを0.5~5.0g添加する,ことを発明特定事項としている。審決は,本件発明1と甲1発明の相違点3について,本件発明1では,上記添加時期及び場所でTiを添加するのに対し,甲1発明では,Tiが添加されるとしても,Tiの添加はどのように行われているか不明な点,と認定し,上記相違点3は,甲1発明等に基いて当業者が容易に想到できたものではないと判断した。

○知財高裁の判断

 上記甲1ないし7の記載を前提に検討するに,Ti酸化物によるVC炭化物の微細化は,溶融金属に添加剤を添加して核として作用させ,合金組織を改良するという広い意味では,鋳鉄のセメンタイト(鉄炭化物の一種)の黒鉛化,鋳鉄中の黒鉛の球状化,Al基合金の初晶微細化,製鋼プロセスにおける脱酸生成物を利用した合金組織の改良と共通していると捉えることができる。そして,かかる少量の金属の添加による合金の改良のメカニズムは,連続鋳掛け法であるか,他の鋳造法であるかによって,大きな違いはないと考えられる。また,時間が経過すると,接種剤の効果が減退してしまうというフェーディング現象や,接種剤の添加後の時間が短すぎると,接種剤が十分溶解せずに本来の目的を達しないということも,鋳鉄以外の多くの合金の接種で一般的に生じることと解される。
 もっとも,接種のメカニズムは必ずしも科学的に解明されておらず,特定の目的で使用する接種剤の種類ごとに異なると考えられている。・・・そうすると,接種の効果を十分に発揮させることのできる接種剤の添加時期や方法もそれぞれ異なり,添加される接種剤の性質や合金の製造装置の構造や工程を踏まえた上での添加方法等を考慮して,最適な方法が定まることになる(甲46参照。本件とは異なる接種剤であるCa-SiとFe-Siに関しての文献であるが,接種温度で接種の影響が異なることを示唆する記載がある。)。
 そして,連続鋳掛け法においては,一般的な鋳造法で採用される鋳型内での接種は技術的には困難であるから,接種剤添加のタイミングとしては,溶解炉,取鍋,注湯炉,耐火枠のいずれかと考えられるが(これら4つのいずれかが添加時期になる点に関しては当事者間にも争いがない。),そのいずれが妥当かという点については,接種剤の種類や量,接種の目的ごとに最適の添加時期や場所は異なるものと解される。一般的には,フェーディング現象が生じないことや,接種の目的を達成するために必要な接種剤溶解のための時間を設けることが技術的課題となるから,これらの課題をクリアする時期や場所を選択することが必要であるが,フェーディング現象や接種剤溶解までの時間も接種剤の種類や量,接種の目的によって異なると考えられるから,一律に溶解炉では早すぎ,耐火枠では遅すぎると判断することはできない。・・・したがって,フェーディング現象や接種剤溶解に要する時間の点を考慮しても,当然に,溶解炉や耐火枠でのTiの添加が除外されるものではなく,所定の効果を得るのに適した添加時期や場所を見出すことは,相当な試行錯誤なくして判明しないというべきである。

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