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平成25年 (行ケ) 第10217号
フッ素置換オレフィンを含有する組成物事件


弁理士 玉腰 紀子
弁理士 須山 佐一

○事案の概要

 本件発明1は,化学式(II)
【化1】

(式中,各々のRは独立にF,またはHであり,R’は(CRYであり,YはCFであり,nは0であり,かつ,不飽和な末端炭素上のRの少なくとも1つはHであり,残るRのうち少なくとも1つはFである)の少なくとも1つの化合物と,ポリオールエステル(POE)及びポリアルキレングリコール(PAG)から選択される少なくとも1つの潤滑剤とを含む熱移動組成物。」である。
 審決は,甲1文献に記載された3つの発明(甲1発明A,甲1発明Z,甲1発明Y)と本件発明1との相違点を,本件発明1は,潤滑剤が「POE及びPAGから選択される少なくとも1つの潤滑剤」と特定されているのに対し,甲1発明A,Z,Yにおいては潤滑剤が特定されていない点,を認定し,本件発明は,次の甲1文献及びその他の公知文献に記載された発明に基づいて当業者が容易想到できたものであると判断した。
 なお,甲1発明Aは化学式(II)の化合物のうち,1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン又は2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペンを,甲1発明Zは1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペンを,甲1発明Yは,HFO-1234yfを用いている。

○判決のポイント

 冷媒化合物及び潤滑剤からなる組成物の混和性及び安定性を確認し,特定の潤滑剤を選択することには,何ら困難性はなく,当業者の予想を超える顕著で有利な技術的効果を奏するものでもないとして審決の判断が維持された。

 事件番号等:平成25年(行ケ)第10217号(知財高裁 H26.06.26 判決言渡)
 事件の種類:無効審決取消請求(請求棄却)
 原告/被告:ハネウエル・インターナショナル・インコーポレーテッド/ダイキン工業
 キーワード:予想を超える優れた効果,組合せの検討
 関連条文:特許法29条2項

○知財高裁の判断

(1)甲1文献には,ハイドロフルオロオレフィン(HFO)に属するHFO-1234ze又はHFO-1234yfからなる熱媒体(甲1発明Z及び甲1発明Y),若しくはこれらの化合物と潤滑剤との組合せからなる熱伝達用組成物(甲1発明A)が開示されていると認められるものの,具体的な潤滑剤の種類については開示されていないから,甲1文献に接した当業者としては,これらの冷媒化合物と組み合わせるべき潤滑剤としていずれの潤滑剤を選択すべきなのかを,上記の考慮要素を踏まえて検討することとなると考えられる。

(2)当業者が,甲1発明に係るHFO系の冷媒化合物であるHFO-1234zeやHFO-1234yfと組み合わせるべき潤滑剤として,上記のようなPAGやPOEとの相溶性を示すHFC系の冷媒やHFO-1336との間で認められた相溶性と同程度の相溶性を示す可能性がそれなりに高いことを予測し,PAGないしはPOEを選択することは,特段の創意工夫を要することなく行うことができるといえる。

(3)本件明細書に,HFO-1234zeやHFO-1225yeとPAG又はPOEとの組合せが奏する混和性についての記載があり,かかる試験結果が・・・HFO-1234yfについても妥当するとしても,これらの混和性(相溶性)は,上記のとおり当業者が予測することができたものであり,また,その相溶性の程度が予測を超える程に格別顕著なものであることを認めるに足りる証拠もない。
 さらに,本件発明は,他の潤滑剤とを組み合わせた場合に比べ,特に優れた安定性を有していることが示されているわけではないから,潤滑剤の種類を全く特定していない甲1発明Aと比べて,当業者が予測し得ない優れた効果を奏するというものでもない。

 以上によれば,本件発明は,混和性や安定性に関して当業者の予測を超える顕著な効果を奏するとはいえない。

(玉腰 紀子)

○コメント

 類似した化学構造をもつ分子同士や極性の似通った分子どうしは相溶性がよい、という技術常識がある。したがって、このような分子同士を溶解するにあたって阻害要因があるというためには、そのことを立証することが必要である。
 裁判所の判断は,このような技術常識に沿うもので、公知文献等に非塩素系の冷媒であるHFC系の冷媒がPAGやPOEとは相溶性がよいことが示されおり,これらに基いて,HFC系の冷媒と同様の非塩素系の冷媒である本件発明の化学式(II)の化合物に,本件発明の課題である相溶性,安定性向上の点から,PAGやPOEを組み合わせることは当業者が想到容易であると判断した。

(須山 佐一)

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