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平成25年(行ケ)第10071号
半導体発光素子事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 本件発明1は,「半導体発光ダイオード」であり,甲1発明は,「半導体レーザ素子」である点を相違点とした審決の認定は誤りである,としたが,凸部の側面のテーパ角に係る相違点については,当業者が容易に想到できたものではないとして,審決の判断が維持された。

 事件番号等:平成25年(行ケ)第10071号(知財高裁 H26.03.26 判決言渡)
 事件の種類:特許維持審決取消請求(請求棄却)
 原告/被告:エヴァーライト エレクトロニクスカンパニー リミテッド/日亜化学工業株式会社
 キーワード:引用発明の認定,動機付け
 関連条文:特許法29条2項

○事案の概要

 本件特許発明は,(請求項1)「基板上に,基板とは材質の異なる複数のGaN系半導体層と,前記GaN系半導体層の最上層に形成されたオーミック電極とを積層し,前記GaN系半導体層で発生した光を前記オーミック電極側又は基板側から取り出すようにした半導体発光ダイオード」に関する発明であって,上記基板はC面(0001)サファイア基板であること,上記基板の表面部分には上記GaN系半導体層で発生した光を散乱又は回折させる凸部が所定の繰り返しパターンをもって形成され,凸部の側面のテーパ角が120°より大きく,140°以下であること等を発明特定事項としている。
 審決は,本件発明1について,甲1発明との相違点1:甲1発明は,半導体レーザ素子であるのに対し,本件発明1は半導体発光ダイオードである点,甲8発明との相違点7:凸部が光を散乱又は回折させるか否か,及び凸部の繰り返しパターンに関する点,相違点9:上記凸部の側面のテーパ角に関する点,について,当業者が容易に想到できたものであるとする根拠を見いだすことはできないと判断した。
 裁判所は,上記相違点1についての審決の判断が誤りであるとしつつ,上記相違点9の他,甲1発明との相違点5:凹凸側面のテーパ角に関する点についての容易想到性を否定した。

○知財高裁の判断

(1)甲1発明は,窒化物系半導体素子に関するものであって,…,この窒化物系半導体の形成方法を用いて製造した半導体レーザ素子は,良好な素子特性を有するとともに高い信頼性を有するという効果を奏するとしている。…甲1発明に係る窒化物系半導体の形成方法を用いて製造した半導体素子は,GaN層の表面においては転位が低減され良好な結晶性が実現されているのであるから,半導体素子の具体的な構成に関係なく,良好な素子特性を有するとともに高い信頼性を有するという効果を奏するといえ,半導体レーザ素子もまた,甲1発明に係る窒化物系半導体の形成方法を用いて製造した半導体素子の一例にすぎないものといえる。
 よって,…本件発明1は,「半導体発光ダイオード」であるのに対して,甲1発明は,「半導体レーザ素子」である点を相違点1とした審決の認定は,…当を得たものとはいえないというべきである。

(2)本件発明1の凸部の側面のテーパ角は,サファイア基板上に形成したGaN系半導体発光ダイオードにおいて,半導体層の結晶性を維持しつつ光の散乱又は回折による出力を向上させることを考慮して,120°超140°以下にしたものと理解される。
 ① サファイア基板上に形成したGaN系半導体発光ダイオードにおいて,半導体層の結晶性を維持しつつ光の散乱又は回折による出力を向上させることを考慮し,基板表面に形成した凸部の側面のテーパ角を120°超140°以下とすることは,甲1発明に記載ないし示唆はなく,また,その外のいずれの公知文献及び周知技術にも記載ないし示唆されてはいない。
 ② 基板表面に形成した凸部側面のテーパ角を120°超140°以下とすることは,甲8発明に記載又は示唆はなく,また,その外のいずれの公知文献及び周知技術にも記載又は示唆されていない。
 よって,審決を取り消すことはできない。

(玉腰 紀子)

○コメント

 甲1発明及び甲8発明は,いずれも,サファイア基板の表面に凹凸パターンが形成された半導体レーザ素子ないしLED素子に関する発明である。甲1発明には,凸部側面が略垂直であること,甲8発明の図面には,おおむね130°の凸部の形状が描かれている。
 裁判所は,公知技術又は周知技術のいずれにも,半導体層の結晶性,光の散乱又は回折による出力効果に着目して凸部の角度を決定する示唆ないし動機付けがないことから,本件発明1の進歩性を認めている。

(須山 佐一)

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