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平成24年(行ケ)第10451号
合わせガラス用中間膜事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

請求項1における「Naを5~50ppm及び/又はKを5~100ppm含有する」の文言が,「Naを5~50ppm及びKを5~100ppm含有する」,「Naを5~50ppm含有し,Kを含まない」,「Kを5~100ppm含有し,Naを含まない」の三つの場合を意味するものとされた。

 事件番号等:平成24年(行ケ)第10451号(知財高裁 H25.09.26 判決言渡)
 事件の種類:特許維持審決取消請求
 原告/被告:クラレ/積水化学工業
 キーワード:明確性要件,サポート要件,実施例
 関連条文:特許法36条6項1号,2号

○事案の概要

 本件特許の請求項1記載の発明(本件発明1)は,「ポリビニルアセタール樹脂100重量部と,トリエチレングリコールモノ2-エチルヘキサノエートを0.1~5.0重量%含有するトリエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート20~60重量部とを主成分とする合わせガラス用中間膜であって,ナトリウム(Na)を5~50ppm及び/又はカリウム(K)を5~100ppm含有することを特徴とする合わせガラス用中間膜。」というものである。原告は,本件発明の「Naを5~50ppm又はKを5~100ppm」含有する場合には,それぞれ他方の成分の添加について制限がなされていないことになるので,明確性要件,サポート要件を欠く,として特許庁に無効審判を請求した。
 これに対して,審決は,本件特許明細書の特許請求の範囲の記載は明確であり,サポート要件も充足するとして,請求を棄却した。

○知財高裁の判断

(1)明確性要件について
 本件発明1の合わせガラス用中間膜における,「ナトリウム(Na)を5~50ppm及び/又はカリウム(K)を5~100ppm含有する」との構成要件について,JISの「規格票の様式及び作成方法 JIS Z 8301」によれば,「及び/又は」の用語が「並列する二つの語句を併合したもの及びいずれか一方の3通りを一括して示す場合」に用いられることが認められるから,この文言は,①「Naを5~50ppm及びKを5~100ppm含有する」場合,②「Naを5~50ppm含有する」,③「Kを5~100ppm含有する」の三つの場合が本件発明に該当することを表現したものと理解できる。
 以上によれば,①の場合は「Na」及び「K」の両者を含有する場合におけるそれぞれの含有量を規定したものであり,②の場合及び③の場合は,それぞれ「Na」又は「K」のいずれか一方のみを含有し,他方を含有しない場合におけるその含有量を規定したものと理解でき,この記載から本件発明1の技術的範囲を明確に把握できるといえる。
 本件審決の上記判断のうち,②の場合に「ナトリウム以外の成分の含有量について何ら限定するものではないから,「カリウムを含有しない」との限定を付す必要はな」いとの部分は,…,仮に「カリウム」の含有量に限定(制限)がないことをも述べたものであるとすれば,…その点の判断は誤りであるといわざるを得ない。また,同様に,本件審決の上記判断のうち,③の場合に…,仮に「ナトリウム」の含有量に限定(制限)がないことをも述べたものであるとすれば,…その点の判断は誤りであるといわざるを得ない。

(2)サポート要件について
 本件明細書の記載事項は,合わせガラス用中間膜にナトリウム又はカリウムのいずれか一方を含有する場合にその含有量が請求項1に規定する数値範囲にあるときは,耐湿性及び帯電防止性がいずれも「良好」であることを示しているから,…本件発明1の課題を解決できることを当業者が認識できるというべきである。
 Naのみを含有する場合とKのみを含有する場合において,それぞれの含有量と表面固有抵抗及び白化距離との関係は,両者とも同様の傾向を示していることに鑑みると,Na及びKの両方を含有する場合においても,具体的な実施例の記載はないものの,上記と同様の傾向を示すものと理解できる。

(玉腰 紀子)

○コメント

 判決は,結論において審決に取消すべき瑕疵は見当たらないとして請求を棄却しているが,その前提において,請求項1の「Naを5~50ppm又はKを5~100ppm」の文言部分は,それぞれNa又はKのいずれか一方のみを含有し,他方を含有しない場合であると判断している。すなわち,本件発明の技術的範囲には,「Naを5~50ppm含み,Kを5ppm未満含む場合」と「Kを5~100ppm含み,Naを5ppm未満含む場合」は,含まれないものと判断した。
 被告は,これらの場合も,本件発明に含まれることを主張したが,実施例には,Naを6~43ppm含有し,Kを含有しない実施例(6例)と,Kを7~94ppm含有し,Naを含有しない実施例(3例)が記載されているだけで,NaとKを併用した実施例が記載されていないこと,請求項1の記載を上記のように文理解釈できること,などから,この主張は認められなかった。

(須山 佐一)

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