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平成24年(行ケ)第10245号
1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの製造方法事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

未反応材料を循環して再利用する方法が周知である,複数工程の目的化合物の製造方法において,未反応材料を,特定の工程から前工程に循環させる方法の発明の進歩性が認められた。

 事件番号等:平成24年(行ケ)第10245号(知財高裁 H25.3.25 判決言渡)
 事件の種類:拒絶審決取消請求
 原告/被告:本州化学工業株式会社/特許庁長官
 キーワード:進歩性
 関連条文:特許法第29条2項

○事案の概要

 本願発明は,フェノールと3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンから,1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンとを反応させる反応工程に続く,一次晶析濾過工程と,二次晶析濾過工程とを備え,「上記二次晶析濾過工程で得られた,1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを含む濾液の少なくとも一部を上記反応工程に循環する濾液循環工程とを含む」ことを特徴とする1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの製造方法である。
 引用発明1と本願発明は,「濾液循環工程において,濾液の少なくとも一部が,本願発明においては,「1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを含む」状態で「反応工程に循環」されるのに対し,引用発明においては,そのような特定がなされていない点で相違している。
 また,周知例4~6には,(ビスフェノールを含む)反応混合物を濾過した残りの母液を反応工程に循環させる技術に関する記載がある。

○裁判所の判断

 審決は,上記相違点について,周知例4~6の記載からみて,分離された濾液を製造目的化合物であるビスフェノール類を含んだ状態で上記「反応」を行う工程に「循環」させることが周知であることを前提として,引用発明における「再結晶ろ液を繰り返し使用する」工程において,再結晶濾液の少なくとも一部を,製造目的物である「1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン」を含む状態で,フェノールと3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとを反応させる工程に循環させることは,当業者が容易になし得たものであると判断する。
 この点,確かに,上記周知例4ないし6等によれば,一般に,化学物質の製造工程において,目的物質を主に含む画分以外の画分にも目的物質や製造反応に有用な物質が含まれる場合には,それをそのまま,あるいは適切な処理をした後に製造工程で再利用して無駄を減らすことは周知の技術思想であって,実際,フェノールとカルボニル化合物からビスフェノール類を製造する場合においても,さまざまな具体的製造方法において,途中工程で得られた有用物質を含む画分が再利用されているものと認められる。
 しかし,ある製造方法のある工程で得られた,有用物質を含む画分を,製造方法のどの工程で再利用するかは,製造方法や画分の種類に応じて異なるものと認められる。
 以上のとおり,審決の上記相違点に係る容易想到性判断には誤りがある。

(玉腰 紀子)

○コメント

 裁判所は,目的物質や反応に有用な物質が同様であったとしても,具体的な製造方法が異なれば,再利用すべき画分も,その再利用方法も異なり,それぞれの場合に応じた検討が必要となると説示した。さらに,この点について,「引用発明においては,再結晶濾液を再利用できる工程として,フェノールと3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとを反応させる前反応及び後反応のみならず,中和後の結晶化工程や再結晶工程が想定されるところ,審決には,フェノールと3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとを反応させる工程に循環させるという構成に至る理由が示されていない」と指摘して,本願発明は容易推考できたものではない,と判断した。
 この場合の検討は,当業者が容易にはなし得ない程度の検討ということであろう。
 本件における引用例は,同一出願人のした特許出願の公開公報で,本願は,引用例が出願公開された日からほぼ4ヵ月後に出願されている。

(須山 佐一)

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