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平成30年(行ケ)第10027号
油または脂肪中の環境汚染物質の低減方法事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 リノール酸は,本件発明1における揮発性作業流体に当たり,甲2発明1の方法を実行すると,環境汚染物質はリノール酸と一緒に分離されるから,本件発明1は,甲2記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた,とされた。

 事件番号等:平成30年(行ケ)第10027号(知財高裁 H31.01.28)
 事件の種類(判決):維持審決取消請求(審決取消)
 原告/被告:日本水産株式会社/BASF アーエス
 キーワード:進歩性,周知技術
 関連条文:特許法29条2項

○知財高裁の判断

 本件発明1における揮発性作業流体と,甲2発明1におけるリノール酸とは,除去対象物質の違いがあるものの,いずれもトリグリセリドと比較して揮発性が高く,除去対象物質と共に蒸留される液体であるとの点で共通する。また,リノール酸は,本件明細書において揮発性作業流体として例示された「C10~C22の遊離脂肪酸」に該当する。したがって,甲2発明1におけるリノール酸は,本件発明1における揮発性作業流体に当たる。甲2発明1のサケ頭油を「臭素化難燃剤およびPCBからなる群より選択される環境汚染物質」を含有するものとすることは,当業者が容易に想到することができたというべきである。
 コレステロールが気化する温度範囲では,より揮発性の高いPCB及び臭素化難燃剤も気化するというべきであるから,「臭素化難燃剤およびPCBからなる群より選択される環境汚染物質」を含有するサケ頭油を使用して,甲2発明1が特定する方法を実行すると,当該環境汚染物質は,当該サケ頭油に添加されたリノール酸と一緒に分離されることとなる。甲2発明1のサケ頭油から,分子蒸留によってPCBや臭素化難燃剤を除去しようとする場合に,その温度範囲を少なくとも175~260℃の間の温度とすることは,当業者が容易に想到することができたというべきであり,これは,本件発明1が特定する温度範囲(150~270℃)に含まれている。
 本件発明1は,甲2記載の発明並びに本件優先日当時の技術常識及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたと認めるのが相当である。

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