知的財産情報

ホーム > 知的財産情報 > 判例紹介 > 光安定性の向上した組成物事件

判例情報


平成29年(行ケ)第10160号
光安定性の向上した組成物事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 甲1発明の組成物に酸化鉄を含有させること自体は,当業者が容易に想到できるが,フィルムコート錠を,フィルムコートを有しない経口固形組成物に変更することには,阻害要因がある,とされた。

 事件番号等:平成29年(行ケ)第10160号(知財高裁 H30.10.11)
 事件の種類(判決):維持審決取消請求(請求棄却)
 原告/被告:エルメッドエーザイ株式会社/大日本住友製薬株式会社
 キーワード:進歩性,阻害要因,経口固形組成物
 関連条文:特許法29条2項

○知財高裁の判断

 医薬品である甲1発明に係る組成物に酸化鉄を含有させること自体は,当業者が容易に想到できるものというべきである。
 酸化鉄は,光に対して不安定な薬物の安定性を高める成分であることかが知られているとしても,甲1発明につき,相違点4に係る構成を備えるものとすることは,当業が容易に想到できたものとはいえない。その理由は次のとおりである。
 アムロシジピン原体は,光により着色し,外観変化と分解物の生成を生じ得るものであるところ,甲1記載のノルバスク錠では,フィルムコーティングを施すことで,光に起因する着色による外観変化と分解物生成を防止していることが理解できる。
 アムロジピンが苦みを有する成分であることは,本件特許の出願日当時における周知の事項であったから,甲1記載のノルバスク錠が備えるフィルムコーティングは,苦みをマスキングする役割も果たしていることが理解できる。
 フィルムコーティングを除去すると,薬剤の溶出挙動が変化する可能性があることは明らかである,甲1発明のベシル酸アムロジピンを含有するフィルムコート錠を,敢えてフィルムコートを有しない経口固形組成物に変更することには,光による変色・分解物の発生のおそれ,苦み,薬剤の溶出挙動の変化等の観点から阻害要因があるというべきである。

© 2017 SAKURA PATENT OFFICE. All Rights Reserved. 特許業務法人 サクラ国際特許事務所
〒101-0047 東京都千代田区内神田1丁目18-14 ヨシザワビル6階
Tel. 03-5577-3066(代)/Fax. 03-5577-3067
国内および外国特許・意匠・商標の出願代理、鑑定、相談、訴訟|特許業務法人 サクラ国際特許事務所