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判例情報


平成29年(行ケ)第10167号
積層フィルム事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 本件発明7に記載した比粘度は、ポリカーボネート樹脂材料の比粘度として知られているものであり,新たな効果を奏するものではないから,甲1発明2との実質的な相違点ではない,とされた。

 事件番号等:平成29年(行ケ)第10167号(知財高裁 H30.05.30)
 事件の種類(判決):取消決定取消請求(請求棄却)
 原告/被告:帝人株式会社/特許庁長官
 キーワード:同一であるとき,新たな効果,比粘度
 関連条文:特許法29条2項

○知財高裁の判断

 特許法29条の2における「発明」と「同一であるとき」の判断に当たっては,後願に係る発明が,先願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明とは異なる新しい技術に係るものであるかという見地から判断されるべきである。そして,明細書は,当該発明に関する全ての技術を網羅してこれを説明しているものではなく,出願当時の当業者の技術常識を前提とした上で作成されるのが通常であるから,上記の「同一であるとき」の判断に当たって,当業者の有する技術常識を証拠により認定し,これを参酌することができるというべきである。
 樹脂材料をフィルム等に成形するに当たって,所期の機械強度と成形性を得るために,分子量に関連する物性である「比粘度(還元粘度)」が好適な値(範囲)である高分子材料を用いることは,本件出願当時の技術常識であった。そして,本件発明7において特定される比粘度の値は,植物由来のエーテルジオール残基を含んでなるポリカーボネート樹脂材料の比粘度として知られているものであり,これを上記範囲とすることによって,上記の認定したものとは異なる新たな効果を奏することを認めるに足りる証拠はない。本件発明7において,植物由来のエーテルジオール残基を含んでなるポリカーボネート樹脂材料について,その比粘度を相違点1に係る値としたことは,甲1発明との実質的な相違点とはいえない
 また,本件発明7において,熱可塑性樹脂材料のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を相違点2に係る値としたこと,及び印刷層の厚さを相違点3に係る値としたことは,は,甲1発明との実質的な相違点とはいえない。本件発明7と甲1発明は,実質的に同一である。

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