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平成29年(行ケ)第10143号
ウェーハレベルパッケージングにおけるフォトレジストストリッピングと残渣除去のための組成物事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○ウェーハレベルパッケージングにおけるフォトレジストストリッピングと残渣除去のための組成物事件

判決のポイント

 本件明細書の記載及び出願時の技術常識を参照しても,当業者は,基板の残差の除去と金属回路の損傷の抑制を両立させ得る組成物を生産することができないから,本件特許は実施可能要件を満たさない,とされた。

 事件番号等:平成29年(行ケ)第10143号(知財高裁 H30.07.05)
 事件の種類(判決):無効審決取消請求(請求棄却)
 原告/被告:イー.ケー.シー.テクノロジー.インコーポレーテッド/富士フイルム株式会社
 キーワード:実施可能要件,サポート要件,2つの性質の両立
 関連条文:特許法36条4項1号

○知財高裁の判断

 本件訂正発明における実施可能要件適合性の判断に当たっては,基板からポリマーやエッチング・アッシング残渣を除去することができることと,金属で形成された回路の損傷量を許容し得る範囲に抑えること,の2つの性質を両立している組成物を生産することができるといえるかどうかを検討することとなる。
 本件明細書に接した当業者は,塩基の濃度及びpHと,基板からのポリマー,エッチング・アッシング残渣の除去作用,及び回路材料である金属の腐食作用との間に関係性があるとの技術常識を考慮して,pHを調整することにより,ポリマー,エッチング・アッシング残渣の除去と金属で形成された回路の損傷量を許容し得る範囲に抑えることの両立が可能であることを一応理解できるとはいえるものの,反面,本件明細書の発明の詳細な説明においては,当該調整の出発点となるべき具体的組成物の実際のpHの値が一切明らかにされていない上,基板からのポリマー,エッチング・アッシング残渣の除去作用と回路材料である金属の腐食作用との関係において,どの程度のpHの調整が必要であるのかについての具体的な情報が余りにも不足している。そのため,当業者が,本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて,本件訂正発明に係る組成物を生産しようとする場合,基板からのポリマー,エッチング・アッシング残渣の除去と回路の損傷量を許容し得る範囲に抑えることとが両立した適切な組成物を得るためには,試行錯誤によって各成分の配合量を探索せざるを得ないところ,このような試行錯誤は過度の負担を強いるものというべきである。

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