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平成29年(行ケ)10041号、平成29年(行ケ)10042号
熱間プレス部材事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 甲3の記載は,Bを含有しない鋼板にTiを含有させることを否定するものではなく,かえって,強度向上の目的でTiを添加してもよいとの記載があるから,当業者が引用発明における鋼板について,Tiをあえて含有しない構成とすることには,むしろ阻害事由がある,とされた。。

 事件番号等:平成29年(行ケ)第10041号(甲事件),平成29年(行ケ)第10042号(乙事件)
 (知財高裁 H30.03.12)
 事件の種類(判決):無効/維持審決取消請求(審決一部取消)
 原告/被告:新日鐵住金株式会社/吉佳エンジニアリング株式会社
 キーワード:Ti,進歩性,阻害要因
 関連条文:特許法29条2項

○知財高裁の判断

 本件発明1と引用発明1の相違点(1)は,部材を構成する鋼板が,引用発明では「Ti:0.02%を含有」するのに対し,本件発明1では,Tiを含有しない点,である。
 甲3(特開2006-110713号公報)には,ホットプレス(熱間プレス)用鋼板として,本件発明1に係る鋼板と重複する成分組成を有するものが記載され(【請求項1】),その実施例として,Tiを含有しないもの(鋼種A,C)と,Ti及びBを含むもの(鋼種B)が示されており(【0018】【表1】),TiはBの効果を発揮させ,また,強度向上のために添加されるものであることが記載されている(【0016】)。これらの記載は,Bを含有しない鋼板にTiを含有させることを否定するものではなく,Bを含有しない鋼板であれば,所望する強度の程度に応じてTiを含有させないことが好ましいことなどを示すものでもない。かえって,甲3には,「強度を向上する目的でTi…を添加してもよい」と記載されている(【0016】)。
 そうすると,引用例1及び甲3に接した当業者が,引用発明における鋼板について,鋼板の強度を向上させる効果を有するTiをあえて含有しない構成とすることの動機付けは存在せず,むしろ阻害事由があるものと認められる。

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