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平成29年(行ケ)第10040号
熱間プレス部材事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 引用発明及び公知技術のいずれにも、Zn-Ni合金めっきにおけるNi含有率や, Zn-Ni合金めっき層の付着量,熱間プレス部材を加熱する際の平均昇温速度との関係などの記載はないから、相違点に係る構成を採用する動機づけは存在しない、とされた。

 事件番号等:平成29年(行ケ)第10040号(知財高裁 H30.03.12)
 事件の種類(判決):維持審決取消請求(請求棄却)
 原告/被告:新日鐵住金株式会社/JFE スチール株式会社
 キーワード:進歩性,動機付け,亜鉛系めっき鋼板,耐食性の確保,外観劣化の防止
 関連条文:特許法29条2項

○知財高裁の判断

 当業者において,Zn-Ni合金めっき層のNi含有率や,Ni含有率と鋼板片面当たりのZn-Ni合金めっき層の付着量との関係に着目し,鋼板の表層にNi拡散領域を十分に形成し,腐食に伴う鋼中への水素侵入を抑制可能な熱間プレス部材とするために,引用例1において優れたプレス成形性,塗膜密着性及び耐食性を示したことが記載されている引用発明1のZn-Ni合金めっき層について,あえてZn-Niめっき鋼板のNi含有率を12質量%から13質量%以上のものに変更することや,Ni含有率を10質量%以上13質量%未満の状態に維持したままで,めっき付着量を「50g/m²」から「50g/m²超え」とすることの動機付けは存在しない。
 甲5の1ないし4の記載から,本件特許の優先日時点において,自動車用鋼板として用いられる亜鉛系めっき鋼板について,めっき中のNiの含有量を13%以上とすることは,周知の技術事項であったと認められる。しかし,甲5の1ないし5にも,引用発明の課題である熱間プレス用の鋼材の耐食性の確保,外観劣化の防止と,Zn-Ni合金めっきにおけるNi含有率や,鋼板片面当たりのZn-Ni合金めっき層の付着量,熱間プレス部材を加熱する際の平均昇温速度との関係については記載されていない。したがって、自動車用鋼板として用いられる亜鉛系めっき鋼板について,めっき中のNiの含有量を13%以上とすることが周知の技術事項であった(甲5の1~5)としても,引用発明1におけるZn-Ni合金めっき層について,Zn-Niめっき鋼板のNi含有率を12質量%から13質量%以上のものに変更することや,Ni含有率を10質量%以上13質量%未満の状態に維持したままで,めっき付着量を「50g/m²」から「50g/m²超え」とすることの動機付けは存在しない。

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