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平成24年(行ケ)第10221号
洗浄剤組成物事件


弁理士 玉腰 紀子
弁理士 須山 佐一

○判決のポイント

ある成分が不純物として認識されている引用発明に対して、当該成分を必須成分とし、組成が同一の洗浄剤組成物の発明の進歩性が否定された。

 事件番号等:平成24年(行ケ)第10221号(知財高裁 H25.1.21 判決言渡)
 事件の種類:維持審決取消請求
 原告/被告:アクゾノーベル/昭和電工
 キーワード:進歩性、不純物、主成分、相乗効果

○事案の概要

 本件は,原告が請求した無効審判に対して,維持審決がなされ,原告がこれを不服として訴えを提起したものである。
 審決は,第1相違点を,本件発明1は,洗浄剤組成物の成分「A)」ないし「C)」を「主成分とし」たものであることを規定するのに対し,引用発明1は,洗浄剤混合物の上記成分に相当する成分についてこれを主成分とは規定していない点,と認定した上で,「相違点1については,引用発明1の金属イオン封鎖剤組成物を含む洗浄剤混合物において,グリコール酸ナトリウムを洗浄効果に寄与する主成分であるとすることは,当業者が通常想到し得る事項であるとはいえない,として請求を棄却し、原告がこれを不服として訴えを提起した。

○判旨

 「引用発明1の洗浄剤混合物は,グルタミン酸二酢酸塩類,グリコール酸塩,陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤を含んでおり,本件発明1の洗浄剤組成物と組成において一致し,かつ,各成分量は,本件発明1において規定された範囲内である。
 このように,引用発明1の洗浄剤混合物は,本件発明1の規定する3つの成分をいずれも含み,かつ,その成分量も本件発明1の規定する範囲内であることに照らすと,単に,グリコール酸ナトリウムが主成分の一つであると規定したことをもって,容易想到でなかったということはできない。」
 「仮に,本件発明1の洗浄剤組成物が引用発明1と対比して異なる成分から構成されるような場合であれば,両発明に共通する成分である「グリコール酸ナトリウム」が,単なる不純物にすぎないか否かは,発明の課題解決の上で,重要な技術的な意義を有し,容易想到性の判断に影響を与える余地があるといえる。しかし,本件においては,前記のとおり,本件発明1と引用発明1とは,その要素たる3成分が全く共通するものであるから,「グリコール酸ナトリウム」が単なる不純物ではないとの知見が,直ちに進歩性を基礎づける根拠となるものではないといえる。」

(玉腰 紀子)

○コメント

 本件特許発明は、成分としては特定していないが「pHが10~13」であることも発明の構成要件として含んでおり、被告特許権者は、この構成による効果も主張したが、裁判所は、「引用発明1の洗浄剤混合物においても,pH8~11において洗浄作用が最大になると理解することは,容易に想到できる事項である。」として被告の主張を退け、請求を棄却している。
 本件の被告は、本発明に類似の組成のグリコール酸ナトリウム,アスパラギン酸ニ酢酸塩類及び/またはグルタミン酸酸二酢酸塩類,水酸化ナトリウムを含有する洗浄剤組成物についての特許権を有しており、本件訴訟の原告は、この特許の無効審判の特許維持審決に対しても審決取消の訴えを提起している(平成24年(行ケ)第10177号(H25.2.27判決言渡)。
 この訴訟では、裁判所は、本件と同一の引用発明1と対比して、異なる成分(水酸化ナトリウム)を含有することによる相乗効果があり,引用発明1における,グリコール酸ナトリウムが不純物である,との認識が当該発明の構成を想到するための阻害要因となるとして,容易想到性を否定し請求を棄却している。
 本件の特許明細書の実施例では、本件発明における「pHが10~13」の調整は、全て10重量%の苛性ソーダの添加によって行われているが、本件発明の「pHが10~13」の構成要件を苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)の量で表せば、本件の場合にも上記別案件と同様の異なる成分との相乗効果の存在を主張できるのではないか、実務家としては気になるところである。

(須山 佐一)

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