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平成27年(行ケ)第10231号
黒ショウガ成分含有組成物事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 本件明細書の実施例には,被覆の量や程度について具体的な記載がなされておらず,これらが不十分である場合に本件発明の課題を解決できることが示されているとはいえないから,サポート要件に適合しない,とされた。

 事件番号等:平成27年(行ケ)第10231号(知財高裁 H29.02.22)
 事件の種類(判決):維持審決取消請求(審決取消)
 原告/被告:株式会社エヌ・エル・エー/株式会社東洋新薬
 キーワード:サポート要件,実施例の被覆の量や程度
 関連条文:特許法36条6項1号

○知財高裁の判断

 本件発明の課題は,「黒ショウガ成分を経口で摂取した場合においても,含まれるポリフェノール類を効果的に体内に吸収することができる組成物を提供すること」にある。
 本件明細書に「油脂」の具体例として,パーム油,ナタネ油と並んで「コーン油」も記載されているが,実施例の結果からは,単にコーン油に混合,懸濁しただけの比較例1被験物質では,効果がないことも認識し得るといえる。
 そして,本件出願当時,一般に摂取されたポリフェノールの生体内に取り込まれる量は少ないという技術常識があるにもかかわらず,本件発明には,「黒ショウガ成分を含有する粒子」自体に吸収性を高める特段の工夫がなされていない態様が包含されており,また,「油脂を含むコート剤」にも吸収促進のための成分が含まれていない態様が包含されていることからすれば,当業者は,本件発明の課題を解決するためには,パーム油あるいはナタネ油のような油脂を含むコート剤にて被覆することが肝要であると認識するといえる。しかし,その一方,ある効果を発揮し得る物質(成分)があったとしても,その量が僅かであれば,その効果を発揮し得ないと考えるのが通常であることからすれば,当業者は,「油脂を含むコート剤」の量や程度が不十分である場合には,本件発明の課題を解決することが困難であろうことも予測するといえる。ところが,本件明細書においては,実施例1の「パーム油でコートした黒ショウガ原末」の被覆の量や程度について具体的な記載がなされておらず,実施例2についても同様であるから,これらの実施例によってコート剤による被覆の量や程度が不十分である場合においても本件発明の課題を解決できることが示されているとはいえず,ほかにそのような記載や示唆も見当たらない。本件発明の特許請求の範囲の記載は,サポート要件に適合しないものというべきである。

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