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平成28年(ネ)第10031号
オキサリプラチン溶液組成物事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 平衡によってオキサリプラチン水溶液中で必然的に生じる解離シュウ酸は,本件発明の「緩衝剤」としての「シュウ酸」に含まれないから,控訴人製品は本件特許の技術的範囲に属さないとされた。

 事件番号等:平成28年(ネ)第10031号(知財高裁 H28.12.08)
 事件の種類(判決):特許権侵害差止請求控訴(請求棄却)
 控訴人/被控訴人:日本化薬株式会社/デビオファーム・インターナショ ナル・エス・アー
 キーワード:緩衝剤,解離シュウ酸,添加シュウ酸,平衡,技術的範囲
 関連条文:特許法70条

○知財高裁の判断

 知財高裁は,本件発明の「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,解離シュウ酸を含まず,添加シュウ酸に限られると判断した。その主な理由は以下のとおりである。

*本件特許の優先日当時の技術常識によれば,「解離シュウ酸」は,「オキサリプラチン」と「水」が混合されなければそもそも存在しない。このような「解離シュウ酸」をもって,「オキサリプラチン」及び「水」とは別個の要素として把握することは不合理である。

*「緩衝剤」とは,「緩衝作用を有するものとして調合された薬」を意味すると解するのが自然である。「調合」することが想定し難い解離シュウ酸(シュウ酸イオン)は,「緩衝剤」には当たらない。

*本件発明において,「緩衝剤」としての「シュウ酸のアルカリ金属塩」とは,添加されたものを指すと解さざるを得ず,「シュウ酸のアルカリ金属塩」と並列的に規定される「シュウ酸」についても同様に,添加されたものを意味すると解するのが自然といえる。

*解離シュウ酸は,オキサリプラチン水溶液において自然に生じる上記平衡状態を構成する要素の一つにすぎない。このような解離シュウ酸をもって,当該平衡状態に至る反応の中でジアクオDACHプラチン等の生成を防止したり,遅延させたりする作用を果たす物質とみることは不合理である。

*本件明細書の実施例に関する記載によると,緩衝剤は外部から加えられるものとされている。これらの実施例に係る安定性試験の結果を示す表においても,解離シュウ酸を含むシュウ酸のモル濃度については何ら記載されていない。

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