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平成27年(行ケ)第10206号
エアバッグ用基布事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 引用発明1の負荷後動的通気度を本件発明1における数値範囲内にしても,これに関係する他の発明特定要素が本件発明1の技術的意義に基づいて設けられた数値範囲内にとどまるといえないから,本件発明1の構成は容易に想到し得ないとされた。

 事件番号等:平成27年(行ケ)第10206号(知財高裁 H28.11.16)
 事件の種類(判決):維持審決取消請求(請求棄却)
 原告/被告:東洋紡株式会社/旭化成株式会社
 キーワード:進歩性,発明特定要素間の相関関係,必然的連動論
 関連条文:特許法29条2項

○知財高裁の判断

 本件発明の発明特定要素間に一定の相関関係があり,負荷後動的通気度については,構成糸の単糸繊度,カバーファクター及び構成糸の引抜抵抗の変動によって影響を受けることは,原告自身も認めるところである。また,本件明細書においても,発明特定要素間の相関関係が明記されている。
 引用発明1の負荷後動的通気度を本件発明1における数値範囲内にすることができたとしても,その際,これに関係する構成糸の単糸繊度,カバーファクター,構成糸の引抜抵抗が変動し,結果としてこれらの要素に係る本件発明1の数値範囲を外れることは,あり得ることである。引用発明1において,構成糸の単糸繊度,カバーファクター及び構成糸の引抜抵抗を変動させる動機付けは認められるものの,これらの各要素に係る数値の変動の程度と負荷後動的通気度に係る数値の変動の程度との関係は,不明であり,この点に関する技術常識の存在もうかがわれない以上,引用発明1の負荷後動的通気度を本件発明1の数値範囲内にする際,上記各要素が本件発明1の数値範囲内にとどまるということはできない。そして,上記各要素の数値範囲は,単糸繊度につき「2.0dtex以上であると,縫製した場合に縫い針によるフィラメントの損傷がなく,縫い目部(膨張部と非膨張部の境界部)の強力が低下したり,展開時に破壊することもない。」(【0013】)などの技術的意義に基づいて設けられたものである。
引用発明1の負荷後動的通気度を本件発明1における数値範囲内にしても,これに関係する上記要素が本件発明1の技術的意義に基づいて設けられた数値範囲内にとどまるといえないから,結局は,本件発明1の構成に至るとはいえず,したがって,本件発明1の構成を容易に想到できるということはできない。

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