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平成28年(行ケ)第10042号
潤滑油組成物事件


弁理士  玉腰 紀子
弁理士  須山 佐一

○判決のポイント

 複数の潤滑油基油成分の混合された潤滑油基油全体の物性は少量の潤滑油基油成分の物性からの予測が困難であるという技術常識に照らすと,明細書には潤滑油基油成分の含有割合が請求項1の下限に近い場合に課題を解決できることの合理的な記載がないから,その上限に近い含有割合の実施例及び明細書の記載からは,当業者が請求項1に係る発明が課題を解決できると認識できない,とされた。

 事件番号等:平成28年(行ケ)第10042号(知財高裁 H28.11.30)
 事件の種類(判決):拒絶審消取消請求(請求棄却)
 原告/被告:JXエネルギー株式会社/特許庁長官
 キーワード:サポート要件
 関連条文:特許法36条6項1号

○知財高裁の判断

 実施例1ないし6と比較例1ないし3の各潤滑油組成物の物性の違いは,主として,含有する「潤滑油基油」の物性の違いによるものである。本願明細書の記載に接した当業者は,「本発明に係る潤滑油基油成分」を70質量%~100質量%程度多量に含む,「本発明に係る潤滑油基油成分」と同じかそれに近い物性の「潤滑油基油」を使用し,粘度指数向上剤を添加して,100℃における動粘度を・・・とし,粘度指数を・・・とした潤滑油組成物は,本願発明の課題を解決できるものと認識できる。
 他方,本願発明は,「本発明に係る潤滑油基油成分以外の潤滑油基油成分としては,特に制限されない」ものであるところ(【0051】),一般に,複数の潤滑油基油成分を混合して潤滑油基油とする場合,少量の潤滑油基油成分の物性から,潤滑油基油全体の物性を予測することは困難であるという技術常識に照らすと,当業者において,「本発明に係る潤滑油基油成分」の基油全量基準の含有割合が少なく,特許請求の範囲に記載された「基油全量基準で10質量%~100質量%」という数値範囲の下限値により近いような「潤滑油基油」であっても,その含有割合が70質量%~100質量%程度と多い「潤滑油基油」と,本願発明の課題との関連において同等な物性を有すると認識することができるということはできない。しかるに,本願明細書には,この点について,合理的な説明は何ら記載されていない。
 したがって,本願発明の特許請求の範囲は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載により,当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものということはできず,サポート要件を充足しないといわざるを得ない。

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